「乙4、取ったほうがいいですか?」
ドライバー仲間にそう聞かれたら、私はこう答えます。
「興味があるなら、取ったほうがいい。就職の幅が広がるから」
私はトラックに乗って25年のドライバーで、乙4(危険物取扱者 乙種第4類)を持っています。ただ、取ってから10年以上、仕事で使ったことは一度もありません。それでも、取ってよかったと思っています。
この記事では、その理由と、取る前に知っておいてほしいことを書きます。資格の仕組みと数字は公的な資料で確かめたこと、後半は私自身の経験です。
乙4とは?ドライバーに関係するのは「乙4」と「丙種」
危険物取扱者は、ガソリンや灯油などの危険物を扱うための国家資格です。消防法にもとづく資格で、甲種・乙種・丙種に分かれています。
| 種類 | 扱える危険物 | 受験資格 |
| 甲種 | すべての危険物 | あり(化学の学歴や、乙種を取ったあとの実務経験など) |
| 乙種第4類(乙4) | 第4類(引火性液体)のすべて。ガソリン・灯油・軽油・重油のほか、アルコール類なども | なし |
| 丙種 | 第4類のうち、決められた品目だけ(ガソリン・灯油・軽油・重油・潤滑油など) | なし |
トラックドライバーに関係するのは、ほぼ乙4と丙種です。乙4が活かせるのはタンクローリーだけではありません。ドラム缶の配送や危険物倉庫まわりなど、仕事の種類は乙4が活かせる仕事の全体像にまとめました。
「タンクローリーには乙4が必須」は、半分まちがい
ここは思い込みが多いところです。昔の私もそうでした。
消防法では、危険物の運び方が2つに分かれています。
- 移送(タンクローリーで運ぶ):その危険物を扱える危険物取扱者が乗っていないといけない
- 運搬(ドラム缶・一斗缶などの容器に入れて運ぶ):運転する人の資格はいらない(積み方や表示のルールはある)
つまり、ガソリン・灯油・軽油のローリーなら、丙種でも乗れます。私が10年前に面接を受けたガソリンローリーの会社も、求人票は「丙種可、乙4尚可」でした。くわしくは第6回:ガソリンローリー=乙4必須は思い込みだった話に書いています。
海コン時代には、危険物のコンテナを何回か運んだことがあります。乙4が必要か聞いたら、「いらない」と言われました。容器に入った危険物を運ぶのは「運搬」なので、法律の仕組みとも合っています。ただ、タンクコンテナのようにタンクごと運ぶものは、ローリーと同じ「移送」の扱いになることがあります。仕事で関わる人は、会社に確認してください。
費用と難しさ(2026年の数字)
| 項目 | 乙4 | 丙種 |
| 受験料 | 5,300円 | 4,200円 |
| 問題数 | 35問(法令15・物理と化学10・性質と消火10) | 25問(法令10・燃焼と消火5・性質と消火10) |
| 合格の基準 | 科目ごとに、それぞれ60%以上 | 科目ごとに、それぞれ60%以上 |
| 合格率 | 33.7% | 48.2% |
※受験料・問題数・合格の基準は消防試験研究センターの案内、合格率は同センターが公表している令和8年度(4〜7月)の実績です。
乙4は、3人受けて1人受かるくらいの試験です。科目ごとに60%が必要なので、得意な科目で点を稼いで逃げ切ることはできません。「すぐ取れる」と書いてあるサイトもありますが、学がない私には、そうは思えませんでした。
学がない私が、乙4を取るまで
私が乙4を目指したのは、海コンの仕事を始めて1年くらいのころです。タンクローリーに乗ってみたくて、ユーキャンの通信講座に申し込みました。
ところが、続きませんでした。最初の1か月は毎日やっていたのに、だんだんやらなくなって、そこから3、4年のブランクがあります。
もう一度やろうと思ったのは、自分をもう一段ステップアップさせたいと思ったときです。今度は本屋で自分が読める参考書を1冊買って、毎朝30分だけ読むことにしました。化学式はどうしても分からず、学校で化学を勉強していた娘に教わりました。
申し込んでから合格まで、はっきりとは覚えていませんが、5、6年はかかったと思います。試験は1回で受かりました。
遠回りの中身は、ここに全部書いています。
- 学がない私が乙4に合格するまで——ユーキャンで始めて、間が空いて、最後は参考書で取った話
- 朝30分だけ。学がない私が乙4に受かった「続けられる勉強ルーティン」
- 学がない私が、乙4の暗記でつまずいたところ——物質名がどうしても覚えられなかった話
10年使わなかったのに、取ってよかったと思う理由
正直に書くと、乙4は取ってから10年以上、仕事で使っていません。面接まで行ったのに、家から近い仕事を選んで、資格は眠らせたままになりました。その話は第1回:乙4を10年眠らせたに書いています。
それでも、取ってよかったと思うことが2つあります。
1つ目は、危険物を扱う会社の面接で、乙4のことを聞かれたことです。ドラム缶配送の会社では「資格は乙4ですか?丙種ですか?」と聞かれました。持っていると、それだけで話が一つ前に進みます。
2つ目は、求人の幅が広がったことです。乙4を条件にしている求人にも応募できるので、選べる求人が増えました。求人サイトに登録したら、タンクローリーの求人が毎日のように届くようになりました。ただ、届いているのに応募ボタンが押せていないのが、私の今の現在地です(スカウトは毎日くるのに、応募ボタンが押せない)。
取ったほうがいい人、急がなくていい人
取ったほうがいい人
- タンクローリーや、燃料・危険物の配送に少しでも興味がある人
- 今の仕事から、いつか動くかもしれない人(選べる求人が増えます)
急がなくていい人
- 今の仕事で危険物を扱わず、この先も扱うつもりがない人
「興味があるなら」と言うのは、興味がないまま取っても、私のように眠らせるだけになるからです。逆に、少しでも頭にあるなら、取っておいて損はありません。
ひとつ付け加えると、求人でよく見る「入社後に乙4取得支援」は、受からなかったときに困るのは自分です。できれば先に取ってから動いたほうが、話が早い。この話も第6回でくわしく書きました。
タンクローリーの給料は、私が思っていたほど高くはありませんでした。調べた相場はタンクローリーの給料相場【2026年版・年収と手取り】にまとめています。
まとめ
- 乙4は、ガソリンや灯油などの危険物を扱う国家資格。受験資格はなく、誰でも受けられる
- ガソリン・灯油・軽油のローリーなら丙種でも乗れる。ドラム缶など容器の「運搬」は資格がいらない
- 受験料は5,300円、合格率は33.7%(令和8年度4〜7月)。科目ごとに60%以上が必要
- 学がない私は、3、4年のブランクをはさんで5、6年かかった。試験は1回で受かった
- 10年使わなかったが、面接で聞かれ、選べる求人が増えた
最後に、もう一度。
興味があるなら、取ったほうがいい。就職の幅が広がるから。
そして、取ったら眠らせないでください。私はそこで10年かかりました。
参考にした資料
- 消防試験研究センター「危険物取扱者試験」(受験資格・受験料)
- 消防試験研究センター「試験科目及び問題数」
- 消防試験研究センター「試験の方法」(合格の基準)
- 消防試験研究センター「試験実施状況」(合格率)
数字は2026年10月時点で確認したものです。受験の前に、最新の案内を確かめてください。
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