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トラックで事故をしたら、修理代を弁償させられるのか。これからドライバーになる人も、今乗っている人も、一度は気になることだと思います。
私はトラックドライバーとして25年、そのうち15年は海上コンテナのトレーラーに乗っていました。その間に、事故をしたことがあります。
先に答えを書くと、私が払った弁償は0円でした。ただ、10万円が消えました。そして、お金よりもあとまで残ったものがありました。
今回はその話と、法律ではどうなっているのかを、分けて書きます。
海コン時代に、事故をした
海コンに乗っていた頃の話です。
大きな事故ではありませんでした。ケガもありませんでした。それでも事故は事故なので、会社に報告して、決まった手続きをしました。
このとき私に起きたことを、お金の話から順番に書きます。
払った弁償は0円。でも、10万円が消えた
修理代を払えと言われたことは、一度もありません。給料から修理代を引かれたこともありません。
その代わりに、無事故手当がなくなりました。
私がいた会社には、こういう手当がありました。
- 無事故手当 月2万円
- 1年間無事故だと 年8万円
事故をした月は、その月の2万円が出ません。そして、その年の「1年間無事故」の8万円もなくなります。
合わせて10万円です。弁償は0円でも、手元に入るはずだったお金が、これだけ消えました。
無事故手当は「事故がなかったら出る」手当なので、事故をすれば出ないのは仕組みどおりです。ただ、求人票で「無事故手当あり」と見たときに、これが事故をした年にこういう形で効いてくる、というところまで想像する人は少ないと思います。私も、自分がやるまで深く考えていませんでした。
事故報告書は、事務所に張り出された
事故のあとは、事故報告書を書きました。
そしてその報告書は、事務所の見えるところに張り出されました。
大きな事故をした人は
私の事故は小さいものでしたが、同じ会社には、もっと大きな事故をした人もいました。
何百万という額の事故をした人は、無事故手当が1年くらい止まっていたようです。事故の金額は噂でしか聞いていないので、ここには書きません。
少なくとも私の場合は、払わされるのではなく、もらえるはずのものが止まるという形でした。
上司の最初の一言は、トラックの心配だった
ここからは、お金の話ではありません。
事故をしたとき、会社に報告しました。そのときに返ってきた上司の最初の一言は、乗っているトラックの心配でした。
相手の心配でもなく、私の心配でもなく、トラックの心配でした。
ケガがなかったので、結果だけ見れば大したことはなかったのかもしれません。それでも、正直がっかりしました。辞めようと思ったのは、あの瞬間です。
すぐに辞めたわけではありません。そのあとも少し続けました。ただ、あの一言はずっと引っかかっていました。
前に収入が下がる転職を、家族にどう説明したかという記事で、海コンをやめた理由のひとつに「大きい車に乗り続けるリスク」と書きました。あれには続きがあります。実際に私は事故をしていて、そのときの会社の反応を、自分の目で見ていました。
仕事が嫌になったわけではありません。海コンの仕事は、今でもいい仕事だったと思っています。ただ、会社との間に引っかかりが残った。この先も大きい車に乗り続けるリスクと合わせて考えた末に、私はやめました。
事故で辞めさせられた人はいなかった
誤解がないように書いておくと、私がいた会社で、事故を理由に辞めさせられた人はいませんでした。
ただ、事故のあとに自分から辞めていく人はいました。その人たちがなぜ辞めたのかは、私には分かりません。
今の会社では、どうなるのか
今は食品の近距離配送をしています。今の会社では、まだ事故はしていません。
今の会社には、無事故手当も愛車手当もありません。なので、事故をしても引かれるものは、たぶんありません。
ただ、事故をしたらどうなるのか、入社のときに説明はありませんでした。今の会社は、条件の多くが口頭だけです。その話は雇用契約書をもらってない|「給料は変わりません」と言われて入った運送会社に書きました。
法律ではどうなっているか(ここからは調べた話)
ここからは私の体験ではなく、公的な資料で調べた内容です。
「事故をしたら◯万円払う」と前もって決めることは、禁止されています。労働基準法16条で、損害賠償の額をあらかじめ決めておく契約はしてはいけないことになっています。
給料から勝手に引くことも、原則できません。労働基準法24条で、給料は原則として全額を払うことになっています。差し引けるのは、法律で決まっているものや、労使で書面の協定を結んだものなどに限られます。
罰として給料を減らす場合にも、上限があります。労働基準法91条で、1回あたり平均賃金の1日分の半分まで、総額でもその月の給料の10分の1まで、と決められています。
では、会社から修理代を請求されたら、全額払わなければいけないのか。
有名な最高裁の判例があります(茨城石炭商事事件、1976年)。タンクローリーなどで石炭や石油を運ぶ会社で、ふだんは小型トラックに乗っていた運転手が、休んだ人の代わりにタンクローリーを運転していて、前のローリーに追突しました。会社は修理代や休業補償など約40万円を運転手に請求しました。裁判所は、会社が運転手に請求できるのは損害額の4分の1までとし、最高裁もこれを支持しました。
このとき考慮された事情のひとつが、会社が経費を浮かせるために、対物保険や車両保険に入っていなかったことでした。事故が起きるかもしれない仕事をさせて利益を得ているのは会社なので、そのリスクも会社がある程度負うべき、という考え方です。
ただし、この「4分の1」は、あくまでこの裁判での判断です。ほかの裁判では3割5分とされた例もあり、一律の基準があるわけではありません。
埼玉県の労働相談のページには、まさに「運送会社でトラックと積み荷を壊して、全額弁償するよう言われた」という相談が載っています。答えは、弁償する範囲は通常、損害の全部ではなく一部。会社のトラックは保険に入っているはずなので、過大な負担をしないよう注意すること。そして、納得できない金額が書かれた書類には、安易にサインしないこと、となっています。
これから入る人へ
事故をしたらどうなるのかを、面接で自分から聞くのは難しいと思います。「事故したら弁償はありますか」と聞けば、事故をする前提の人だと思われそうです。
なので、入ってから知っておいてほしいことを書いておきます。
- 弁償がなくても、手当で引かれることはある。無事故手当がある会社なら、事故をした年はその分がなくなる
- 「全額弁償しろ」と言われても、その場でサインしない。法律と判例では、全額を払うのが当たり前ではない
- 困ったら、労働局や都道府県の労働相談に聞く。無料で相談できる
自分では聞きにくいことは、間に人を挟むという手もあります。ドライバー専門の転職エージェントなら、事故のときの扱いや保険の入り方のような、面接では聞きにくい条件を代わりに確かめてもらえます。たとえばドライバーの求人・転職・募集なら【レバジョブ】
は、ドライバー職に特化したサービスです。
私は登録していないので、使った感想は書けません。自分で確かめられる人は、無理に使う必要はありません。
お金より、あとまで残ったもの
事故をして、私が払った弁償は0円でした。消えたのは、手当の10万円です。
10万円は小さなお金ではありません。それでも、私の場合、あとまで残ったのは10万円より、あの一言のほうでした。
事故をしたとき、会社が何を一番に心配するのか。それは求人票にも、面接にも出てきません。事故をした日に、初めて分かることです。
参考にした資料
- 労働基準法(e-Gov法令検索)(16条・24条・91条)
- 厚生労働省「確かめよう労働条件」損害賠償に関する判例
- 最高裁判所 昭和51年7月8日判決(茨城石炭商事事件)
- 埼玉県 労働相談Q&A「会社からの損害賠償請求について」
- 厚生労働省 スタートアップ労働条件「減給の制裁」
法律の内容は2026年10月時点で確認したものです。実際に請求されたときは、労働局や都道府県の労働相談窓口に相談してください。


コメント
今回も記事面白かったです。ありがとうございます。
ふと気になったんですが、食料品配送だと商品破損で自腹買取って、今お勤めの会社でも有ったりしませんか?答えにくいならコメント許可されなくて、どうぞ放置でお願いします。
ちなみに自分が勤務しているローリーの会社でも無事故手当てがあって、事故やったとしての事故の金額の3.5分の1~4分の1くらいを毎月無事故手当て分で埋めていくという計算で、給料から無くなっていくシステムです。(無事故手当てが上限なのでマシといえばマシなんでしょうか)ちなみに大したことない事故だと判定は甘々です。
すごい事故の金額が残ってるのにやめた時どうなるかは流石に聞いたこと無いです。
いつも読んでいただいて、ありがとうございます。
今の会社では、商品を壊して自腹で買い取り、というのはありません。前に同僚が商品を破損したとき、上司から「弁償しろよ」と言われていたことはありましたが、実際に払わされることはありませんでした。
ただ、ドライバーによっては責任を感じて、会社に知られないよう内緒で買い取っていた、という話も聞きます。私は一切出しませんでした。やってしまったことは正直に報告して、どうするかは会社の判断に任せる。そのうえで反省して、次にどうすればいいかを考える。ずっとそうしてきました。
無事故手当で事故の金額を少しずつ埋めていく仕組みは、初めて知りました。同じ「無事故手当」でも、会社によって使われ方がずいぶん違うんですね。私がいた会社は、事故の月とその年の分が出なくなるだけでした。
大きい事故の金額が残ったまま辞めたらどうなるのかは、確かに気になります。今回も具体的な話をありがとうございました。
ちなみに今回の記事を見てAIに聞いてみた質問と回答要約です。記事の本筋とぶれるのでアレだったら、こちらもコメント許可されなくても、どうぞ放置でお願いします。
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質問
食料品のトラック配送での、輸送中による商品の破損による運転手の買い取りなどの悪弊はまだまだ横行しているのか?
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コンビニ配送での、食料品の期限切れによる、運転手の買い取りの悪弊の横行はどうなのか?
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回答
運送会社が本来負うべき経営リスクを弱い立場のドライバーへ不当に転嫁している違法性の高い悪弊です。
法改正による「追い風」と残る課題
2026年1月施行の改正(下請法→取適法)で、運送委託も規制対象に追加され、買いたたきや不当な返品への監視は強まっています。また、食品業界全体で納品期限の緩和(3分の1ルール見直しなど)も進んでおり、期限切れリスク自体を減らす動きはあります。
ただし、法律があっても「現場で泣き寝入りする」構造は簡単には消えません。運転手個人が荷主と直接交渉するのは困難なため、会社として「中身に問題がなければ免責」「返品基準を書面化する」 といった防御策をとることが現実的な自衛手段になります。
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質問
トラック運転手なら自腹買い取りさせられていたりするが、ホワイトカラーでも損害を発生させるような事態を起こせば、例えば運転手の無事故手当みたいなものを削られたり査定の悪化で給料を減らされたりはしないのか?
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回答
ホワイトカラーであっても、業務上のミスや損害発生が無傷で済むわけではなく、「賞与の減額」「昇給の見送り・降給」「降格による手当喪失」という形で間接的に給与へ悪影響が及びます。
大きな違いは、ホワイトカラーの場合は「損害の金額そのものを個人に弁済させる(自腹を切らせる)ことはできず、あくまで評価制度の枠組みの中で給与やボーナスが抑えられる」という点です。トラック配送の自腹買い取りのような「損害実費をその場でドライバーに負わせる」ような運用は、業界の悪習として特に歪んだ形と言えます
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個人の感想
平成前期の光通信みたいなヤバイ企業だと、ホワイトカラーでも容赦なく給料とボーナス減額されてそうだし、今でもホワイトカラーだろうが、契約失注みたいな事すると、中小零細だとそれなりに給料引かれてそうだなと思います。
トラック運転手だけじゃなく、会社からもらえる給料を毎月全額もらえる前提で生計立ててると、なにかしら起こった時に詰むのは間違いないですね。