業務委託に契約書はないのか|軽貨物・傭車も明示が義務になりました

軽バンの助手席に置かれた一枚の紙と夕暮れの配送センター|その紙は、今は義務になった 仕事のリアル

先に書いておきます。私は業務委託をやったことがありません。25年、ずっと会社に雇われているドライバーです。

ただ、面談までは行きました。20年くらい前に、軽貨物の業務委託会社へ。やらずに終わりましたが、そのときに渡された紙のことを、最近になって思い出しました。

2024年11月1日から、法律が変わっています。業務委託で人に仕事を出す側に、条件を書いて渡す義務ができました。フリーランス法という名前です。

条件を書いたものが出てくるかどうかは、これまで多くの場合、発注する側の判断次第でした。今は、義務です。

20年くらい前、軽貨物の業務委託会社に面談に行きました

ドライバーになって5、6年目の頃です。市場で魚と野菜の配送をしていました。20年くらい前になります。

市場で仲の良かった卸業者から、こう言われたのがきっかけでした。

「会社を通さないで、直接うちの配達やってくれる人もいるんだよ。あんたも自分でやればいいのに」

その気になって、知り合いの個人事業主の人と一緒に、軽貨物の業務委託会社へ面談に行きました。

言われたことは、だいたいこんな内容でした。仕事が来たら連絡する。一回いくら。定期便も紹介できる。受けるかどうかは自由。

そして紙をもらいました。仕事の流れが書いてあるもので、パンフレットのようなものだったと思います。

結局やらなかったのは、その会社の人にこう言われたからです。

「会社のトラックで来てるなら、今の会社に迷惑かかっちゃうからね」

なぜ迷惑がかかるのか、詳しい理由はもう覚えていません。ただ、会社の車で配送した帰りにそのまま面談に来ていたのですから、言われてみればその通りだと思いました。一言で切られたのではなく、色々説明して、相談にも乗ってくれました。悪い会社ではなかったと思います。

断っておきますが、20年前の条件は今の参考になりません。単価も仕組みも、今とは違うはずです。私がここで言いたいのは条件の話ではなく、あの会社は、フリーランス法ができるずっと前に、説明をして紙を出したということです。

今も、ほぼ毎日会います

今の会社でも、軽貨物や傭車のドライバーとはほぼ毎日顔を合わせます。

横で見ていて思うのは、きついのは単価より配車だということです。単価が安いという話は、私は聞いたことがありません。ただ、行き先が離れている。量が多い。それを全部、店の冷蔵庫にしまう。階段で上まで運ぶ。自社の配車より、はっきりきつそうに見えます。

もうひとつ、気づいていることがあります。

順番を、必ず聞いてくるんです。「次、着けていいですか」と。こちらが社員だから偉いなんてことは一切ないのに、向こうが気をつかってくる。挨拶も、正直に言えば自社の社員より気持ちがいい。

扱いが違うわけではありません。誰も差別していない。私が社員だから、あそこまで気をつかわずに着けさせてもらっている。それだけの違いです。

自分が同じ立場だったら、同じように聞くと思います。

その働き方に、2024年11月から新しい法律ができました。

ここから先は、私が調べたことです

ここから下は体験談ではありません。厚生労働省と公正取引委員会の資料を読んで書いています。出典は記事の最後にまとめました。私の意見ではなく、条文と公的資料に書いてあることです。

間違っていたら直しますので、教えてください。

「労働者」なら、雇用形態は関係ありません

まず、雇われている側の話です。

労働基準法15条は、労働条件を明示しなさいという条文です。ここでいう「労働者」は、雇われている人全員です。正社員、契約社員、パート、アルバイト、区別はありません。週2日3時間のバイトも対象です。

「社員だけの話でしょう」と思っている人が多いところですが、違います。

派遣で働いている場合は、明示するのは派遣元です。派遣先ではありません。

パート・アルバイトは、むしろ項目が多い

これは知りませんでした。

パートタイム・有期雇用労働法6条で、労基法の項目に4つ追加されています。

  • 昇給の有無
  • 退職手当の有無
  • 賞与の有無
  • 相談窓口

しかも文書で渡すことが必要で、違反した場合は同法31条により10万円以下の過料です。

つまり、パートやアルバイトは「軽い扱いでいい」どころか、正社員より明示すべき項目が多い。逆なんです。

業務委託だけが、労基法から外れます

ここが本題です。

軽貨物、傭車、個人事業主。業務委託は「労働者」ではないので、労基法15条の対象になりません。労基法の話をしても届かない。

ということは、条件を書いたものを出すかどうかは、これまで発注する側に任されていたということです。出す会社もあれば、出さない会社もある。20年前に私が面談に行った会社は、出すほうでした。

それが2024年11月1日に変わりました。

2024年11月1日から、発注側に明示義務ができました

「フリーランス・事業者間取引適正化等法」。正式には「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」です。長いので、フリーランス法と呼ばれています。

この法律の第3条で、業務委託をする側は、次の8つを明示しなければならないと決まりました。

  • 発注する側と、受ける側の名称
  • 業務委託をした日
  • 給付・役務の内容(何をするのか)
  • 給付・役務提供の期日(いつまでに)
  • 給付・役務提供の場所(どこで)
  • 報酬の額と、支払期日
  • 検査をする場合は、検査完了日
  • 現金以外で支払う場合は、その支払方法

方法は、書面でも電磁的方法でもかまいません。ここは誤解されやすいところで、立派な契約書である必要はありません。メール、チャット、SNSのメッセージ、ウェブページのURLを教える形でも認められます。箇条書きでもいい。

タイミングは、業務委託をしたら直ちに。仕事を受けることに合意したら、すぐにということです。

報酬の支払期日についても決まりがあります。給付を受け取った日から60日以内の、できるだけ短い期間内。こちらは、発注側が従業員を使っている事業者である場合の義務です。

基本契約書があっても、案件ごとの明示は必要です

ここは言われないと分からないところだと思います。

最初に基本契約書を一枚交わしていても、それで終わりではありません。毎回変わらない項目(支払方法など)は基本契約書で決めておけますが、案件ごとに変わる中身・日にち・金額は、その都度明示が必要です。「契約書はもう最初に書いたでしょう」だけでは済みません。

毎日、仕事が来たら連絡が入る。一回いくらで受ける。あの形で働いている人は、その連絡のたびに条件が明示されているべきということです。

罰金の話は、正確に書いておきます

「違反したら50万円の罰金」と書いてある記事をいくつか見ましたが、これは少し違います。

流れはこうです。まず助言・指導。報告を求められたり、立入検査が入ったり。それから勧告。勧告に従わなければ、命令と企業名の公表。

50万円以下の罰金は、「明示しなかったこと」そのものに対して科されるのではありません。命令に従わなかった場合、または立入検査や報告の求めに応じなかった場合です。初回の違反でいきなり罰金になるわけではない。

ここを大げさに書くと、かえって足元をすくわれます。だから正確に書きました。大事なのは罰金の額ではなく、行政に相談する筋道ができたことです。厚生労働省が委託している「フリーランス・トラブル110番」という窓口があります。

傭車は、別の法律で書面が義務になっています

ここまでのフリーランス法には、対象の線引きがあります。守られるのは従業員を使っていない人です。一人で走っている軽貨物や一人親方は入りますが、ドライバーを雇っている運送会社が傭車として受ける場合は、この法律の対象ではありません。

ただ、傭車には別の決まりがあります。2025年4月から、貨物自動車運送事業法の改正で、運送会社が別の運送会社に運送を頼むときにも、運送の内容と運賃・料金などを書いた書面を渡すことが義務になりました。荷主と運送会社の間も同じです。書面の代わりに、相手の了承があればメールなどでもかまいません。

電話一本で頼むだけでは、この義務を果たしたことになりません。国土交通省のQ&Aにも、そうはっきり書いてあります。

つまり、軽貨物の個人はフリーランス法、傭車は貨物自動車運送事業法。どちらの立場でも、条件を書いたものを受け取るのが当たり前になったということです。

契約が業務委託でも、実態で労働者と判断されることがあります

運送に直接関わる話なので、これも書いておきます。

紙の上は業務委託でも、始業時間が決まっていて、行き先も会社が決めて、断る自由がない。そういう働き方の場合、実態として労働者と判断されることがあります。いわゆる偽装請負です。

労働者と判断されれば、労基法が適用されます。

20年前に私が面談で言われたのは「受けるかどうかは自由」でした。あれが業務委託の形です。受ける自由がないなら、それはもう違う働き方をしているということになります。

20年前の面談より、下の会社になってしまう

まとめます。

20年前に私が行った軽貨物の業務委託会社は、フリーランス法ができるずっと前に、説明をして、仕事の流れが書いてある紙を渡しました。私が向いていない理由まで教えてくれました。

2024年11月1日から、それが義務になりました。

ということは、今、条件を書いて渡さない発注者は、20年前のあの会社にも負けているということです。義務になる前からやっていた会社があるのに、義務になってからやらない。

私は業務委託をやっていないので、「こうすれば稼げる」という話は書けません。書けるのはここまでです。

ただ、これから業務委託を始める人に、ひとつだけ言えることがあります。仕事の話をした時点で、条件が書かれたものが来るかどうか。来なかったら、聞いていい。それは法律で決まっていることで、こちらのわがままではありません。

雇われている側でも、同じ失敗を私はしています。書面が一枚もない会社に入って、手当を聞かずに口約束で始めました。その話は雇用契約書をもらってない|「給料は変わりません」と言われて入った運送会社に書いています。

雇用でも業務委託でも、結局同じところに行き着きます。相手の言い方を、数字と書面で確かめる。その考え方は運送会社の選び方【求人票で分からない見極め方】にまとめました。

参考にした資料

法律の内容は2026年10月時点で確認したものです。制度は変わることがあるので、実際に判断するときは上の公的な窓口で確かめてください。

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