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求人を見ていると、「免許取得支援あり」「入社後、会社負担で免許を取れます」という文字をよく見かけます。
お金をかけずに免許が取れるのは、ありがたい話です。ただ、気になるのは「途中で辞めたら、その費用は返さないといけないのか」というところだと思います。
私はトラックドライバーとして25年働いてきました。大型もけん引も、自分のお金で取りました。一方で、今の会社では、会社のお金で免許を取らせてもらっている人を何人も見てきました。その中には、免許を取って3日目で来なくなった人もいます。
今回は、自分で取った側と、会社に取らせてもらった人を近くで見てきた側の両方から、この話を書きます。法律の話は、厚生労働省の資料で確認できた範囲で書きます。
先に結論:返すかどうかは「何の免許を、いくらで、何年」で決まる
先に結論を書きます。
「辞めたら全額返せ」が、いつでも通るわけではありません。かといって、「会社のお金で取った免許は、絶対に返さなくていい」とも言い切れません。
分かれ目になるのは、会社の命令で取ったのか、返す金額はいくらか、何年勤めれば返さなくてよくなるのか、といったところです。だから、取得支援で入るなら、その条件を入社前に紙で確認しておく。これがこの記事で一番伝えたいことです。
私は大型もけん引も、自分で取った
けん引免許を取ったのは、20代の後半でした。当時は別の会社でトラックに乗っていました。
きっかけは、よその会社でトレーラーに乗っていた先輩です。その姿を見て、乗りたくなりました。教習所に通って、費用は自分で出しました。取ったあとに、その先輩の会社に入って、海コンの仕事に就きました。そのときの話はトレーラーに乗り換えた日に書いています。
大型も、会社の支援は使わずに自分で取っています。
自分のお金で取った免許なので、どの会社を辞めるときも、免許代を返す話は最初からありません。
今の会社では、会社のお金で取らせている
私の世代の普通免許は、8トンのトラックまで乗れました。今は制度が変わって、同じ「普通免許」でも、いつ取ったかで乗れる車の大きさが違います。
- 平成19年6月1日以前に取った普通免許:8トン限定中型(車両総重量8トン未満まで)
- 平成19年6月2日〜平成29年3月11日に取った普通免許:5トン限定準中型(車両総重量5トン未満まで)
- 平成29年3月12日以降に取った普通免許:車両総重量3.5トン未満まで
今の会社では、入ってきた人はまず2トン車に乗ります。そして半年くらいたったころ、会社のお金で、もう一つ上の免許を取らせてもらっていました。準中型なのか中型なのか、そこまでは聞いていません。何人もこの形で取っています。
いま会社のお金で教習所に通っている同僚に聞いてみると、誓約書のような縛りは何もないそうです。ただ、この同僚はトラックに乗るためではなく、別の事情で取っている免許です。トラックに乗るために取った人たちも同じだったかまでは分かりません。
取って3日目で、来なくなった人
その中の一人が、免許を取って3日目で会社を辞めました。辞めたというより、来なくなりました。
さすがにこのときは、会社も「費用を請求する」というようなことを言っていました。
ただ、そのあと実際に請求したのか、どうなったのかは聞いていません。本人がなぜ来なくなったのかも、私は知りません。なので、この話はここまでです。
では、こういうとき法律ではどうなっているのか。調べてみました。
法律では、どうなっているのか
「辞めたら罰金」は、法律で禁止されている
労働基準法16条には、こう書かれています。
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。(労働基準法第16条)
厚生労働省(中央労働委員会)の資料では、この決まりの目的を、お金を払わせることで辞める自由を縛る「足止め策」を禁止するためだと説明しています。
事故の弁償の話も、同じ16条が関わってきます。そちらはトラックで事故したら弁償させられるのかに書きました。
ただ、免許の費用は「本人のもの」と見られやすい
同じ資料に、タクシー運転手の二種免許の費用をめぐる裁判が紹介されています(コンドル馬込交通事件・東京地裁 平成20年6月4日判決)。資料によると、裁判所の判断はこうです。
- 二種免許は、仕事をするうえで欠かせないもの
- それでも、免許は本人に付くもので、会社を辞めても使える
- 返す額は20万円に満たず、返さなくてよくなるまでの勤務は2年
- この条件なら、辞める自由を不当に縛るとは言えない=16条違反ではない
免許は会社の持ち物ではありません。自分の財布に入って、次の会社でも使えます。ここが、ただの社内研修とは違うところです。
会社の命令で取らせて、長く縛るのは違反になりうる
反対に、会社が業務命令で留学に行かせ、期間内に辞めた人への制裁になっているような費用返還の約束は、16条違反とした裁判もあります(新日本証券事件・東京地裁 平成10年9月25日判決)。
福島県の労働相談Q&Aでも、業務命令で資格を取らせて「取得後5年以内に自己都合で辞めたら全額返還」とする規定について、法律違反の可能性があると答えています。
判断のポイント
厚生労働省の資料では、これまでの裁判は、次のような点をまとめて見て判断している、と整理されています。
- 給料の約束(労働契約)とは別に、お金を貸す約束になっているか
- 取るかどうかを、本人が自分で選べたか
- どれだけ仕事のための免許・研修か
- 返さなくてよくなる条件(何年勤めればいいか)が、筋の通ったものか
- 返す金額や返し方が、筋の通ったものか
なかでも、「仕事のためか、本人のためか」が決め手になりやすい、と資料には書かれています。
それともう一つ。同じ資料では、そもそも「返す約束が成立していたか」も検討する点に挙げられています。紙に残っていなければ、言った言わないの話になりかねません。
実際にあった、バス運転手の話
同じ資料は、労働局のあっせん(話し合いの手助け)で解決した事例でもあります。
観光バスの会社に入った人が、入社後に会社の全額負担で大型二種を取りました。そして4か月で自己都合退職。会社は、免許の費用の一部と、在職中に起こした事故の修理代を請求しました。
本人は「会社に言われて取った免許だから、全額会社が払うべきだ」。会社は「少なくとも1年は勤める前提で出した」。話し合いの結果、本人が解決金を払う形で決着しています。
会社のお金で取った免許を持って早く辞めた場合、まったく払わずに済むとは限らない、ということです。
取得支援で入る前に、確認しておきたいこと
同僚のように縛りが何もないという話もあれば、先ほどの相談例のように「5年以内に辞めたら全額返還」という決まりが問題になることもあります。これは面接で聞き出す話ではありません。入社のときに渡される書類で、次のところを見ておいてください。
- 返す条件が、紙に書いてあるか。雇用契約書、就業規則、誓約書など
- 返す金額はいくらか。実際にかかった費用の範囲か
- 何年勤めたら返さなくてよくなるか。勤めた期間に応じて減っていくか
- 会社が「取れ」と言った免許か、自分が取りたくて取る免許か
入社の書類に返金の条件が入っていたら、サインする前に、そこだけは読んでおいてください。もし辞めるときに請求されて困ったら、都道府県の労働局や労働基準監督署にある「総合労働相談コーナー」に相談できます(無料)。
私のように、自分で取ってしまうという道もあります。費用はかかりますが、どこを辞めるときも免許代の話は出てきません。費用の目安や、安く取る方法は大型免許の取り方と牽引免許の取り方に書いています。
取得支援の条件は、会社によってかなり違います。いくつかの会社を比べたいときは、間に人を挟んで聞いてもらう手もあります。たとえばドライバーの求人・転職・募集なら【レバジョブ】
は、ドライバー職に特化した転職サービスです。私は登録していないので、使った感想は書けません。自分で確かめられる人は、無理に使う必要はありません。
まとめ
- 会社のお金で取った免許でも、「辞めたら全額返せ」がいつでも通るわけではない
- ただ、免許は辞めても使える「本人のもの」なので、金額と期間が常識的なら、返す約束が有効とされた裁判もある
- 分かれ目は、会社の命令か、金額はいくらか、何年で免除か
- 取得支援で入るなら、その条件を入社前に紙で確認しておく
取って3日で来なくなった人が、そのあとどうなったのかは分かりません。ただ、入る前に条件を知っていれば、少なくとも「知らなかった」で困ることはなくなります。
※この記事は、厚生労働省(中央労働委員会)の資料「労働者の資格取得費用の負担及び損害賠償責任の制限」と、福島県の労働相談Q&Aをもとに書いています。実際に返すかどうかは、契約の中身によって変わります。困ったときは、労働局や弁護士に相談してください。

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