食品系タンクローリーのリアル【牛乳・醤油・ジュースの違いと現場の本音|乙4第5回】

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「食品系のタンクローリーって、危険物より楽そうじゃないか?」

業界25年やってきて、後輩からこの質問を一番よく聞きます。確かに、ガソリンや化学品みたいに「一歩間違えれば爆発」みたいな緊張感はない。でも、25年現場にいて食品系ローリーの先輩・同僚を見てきた限り、楽な部分と、食品系ならではのきつさが両方あるんです。

この記事では、求人広告ではあまり書かれない「食品系タンクローリーの中身」を、業界25年で見聞きしてきた話ベースで整理します。

食品系タンクローリーって、実際に何を運んでいるのか

「食品系」とひと括りにされがちですが、運ぶものによって現場の色がかなり違います。25年で耳にしてきた範囲だと、ざっくりこんな感じです。

牛乳・乳製品

牧場・酪農家を回って原乳を集めて、乳業メーカーの工場やクーラーステーションへ運ぶパターンが多い。「集荷ローリー」と呼ばれることもあります。鮮度・温度管理の関係で基本は地場〜近距離。長距離はほぼありません。

早朝勤務が多いのは確かで、求人を見ると「6時〜15時」「7時〜16時」が中心。一部の会社で「3時出勤」のシフトがあって、そういう現場だと深夜2時起きという話も聞きます。会社・シフトで幅があるので、面接で「自分が入る現場の出勤時間」は必ず聞いた方がいい部分です。

醤油・食用油・調味料

大手調味料メーカーの工場から、業務用ユーザー(外食チェーンの工場、加工食品メーカーなど)へ運ぶ仕事。地場〜中距離が中心で、長距離もあるという構成です。食用油の求人だと「関東〜中京の中長距離便」みたいな書き方をされている会社も多い。

清涼飲料水のシロップ・原液、液糖

ジュースやコーラ系のシロップ原液、液糖を、飲料メーカーや食品加工メーカーの工場へ。「ジュース運んでる」と言うとイメージしやすいですが、実際は希釈前の濃いシロップ・糖液です。工場間輸送なので中距離が多い印象。

酒類・アルコール系

ここは少しややこしくて、運ぶ中身によって法律上の扱いが変わります

  • 日本酒・ビール・ワイン本体(アルコール度数20%程度まで)→ 危険物ではないので食品系扱い
  • スピリッツ原酒・醸造用エタノール(高濃度アルコール)→ 危険物第四類アルコール類、乙4が実質必要

同じ「お酒関係のローリー」でも、運ぶ中身が違うと求人で求められる資格も違ってくる。求人票で「酒類輸送」と書いてあったら、何を運ぶか面接で確認するのがおすすめです。

大事なのは、「食品系」と一括りにしても、運ぶ品目で生活リズムも年収も全然変わるということ。求人を見る時に「食品系ローリー」とだけ書かれてたら、面接で「具体的に何を運びますか?」は必ず聞いた方がいいです。

求人広告の「年収◯◯◯万」と、現場の中心レンジ

求人を見ると「年収600万円可能!」みたいに大きく書いてある会社もあります。ただ、業界25年見てきた感覚と求人の月給レンジ(30〜40万円中心)から実態を見ると、食品系タンクローリーの中心レンジは450〜540万円くらい。化学品ローリー(第4回で書いた中心800万前後)と比べると、明確に一段下がります。

理由はシンプルで、「危険物としての特殊性が低い」「事故時のリスクが化学品ほど大きくない」ぶん、運賃単価が下がるからです。荷主からの「特殊技能料」みたいな部分が少ない。

もう少し中身を分けると、ざっくりこんな印象です。

  • 地場・近距離中心(牛乳系など):400〜500万くらい。早朝はあるが家には帰れる
  • 中距離メイン(醤油・食用油・液糖系):450〜540万くらい。月の休日は8〜9日が標準
  • 長距離メイン・歩合あり:500〜600万到達も。ただし家にいる日が少ない条件付き

「年収600万」と書いてある会社の中身を聞いてみると、月の半分以上が車中泊・運行日数が多いケースがほとんど。求人広告の最大値は「その働き方ができる人だけ届く数字」だと思っておいた方が、入ってからギャップで辞めずに済みます。

「食品系は楽」って本当なのか

結論から言うと、「危険物としてのリスクは楽、でも別のしんどさがある」というのが、25年現場で見てきた感覚です。

楽な部分

  • 爆発・引火のリスクが基本的にない(高濃度アルコール系を除く)
  • 事故っても化学品みたいに「住民避難」とかにはならない
  • 消防法の縛りがガソリン・化学品より緩い
  • 運転中の精神的な張り詰め方は、化学品より明らかに軽い
  • 荷卸しはホース接続→ポンプ送液なので、待機時間自体は比較的短め

食品系ならではのきつい部分

  • 衛生管理が異常に厳しい:タンク洗浄記録、温度管理、異物混入の点検。「ちょっと汚れてた」で出荷停止になる現場もある
  • タンク洗浄が重い:食品系は蒸気殺菌+乾燥が必要で、納品後の洗浄作業に時間が取られる
  • 早朝勤務:牛乳系を中心に、出勤が朝早い現場が多い
  • 時間指定が厳しい:工場の製造ライン都合で「遅れたらライン止まる」みたいなプレッシャーが乗る
  • 夏場の温度管理:保冷タンクとはいえ、夏の長距離は神経使う品目もある

同じ会社にいた食品系の人たちを見てると、「危険物系より気が楽」って言う人と、「衛生と時間指定で胃がやられる」って言う人が半々くらい。どっちのストレスが自分に合うかで、向き不向きが決まる世界です。

25年見てきて、食品系で長く続く人の共通点

食品系ローリーで10年、20年と続けてる人を業界で何人も見てきました。共通点は、はっきりしてます。

  • 「きれい好き」が苦じゃない人:タンク洗浄・記録作業を「面倒」と思わない
  • 朝型の生活が苦じゃない人:早寝早起きが体質的に合っている
  • 派手な年収より、安定を優先する人:「化学品で年収900万」より「食品系で家族と過ごす時間」を選べる
  • 細かい数字・記録を取れる人:温度ログ・洗浄記録・受入伝票のチェックが几帳面
  • 「決まった時間に決まった場所に着く」が苦じゃない人:イレギュラーよりルーティンが好き

逆に、「自由に走りたい」「ガッツリ稼ぎたい」「夜更かし型」みたいなタイプは、入ってから1〜2年で別の業種に移っていく人が多い印象です。

食品系に向いてる人・向かない人

向いてる人

  • 朝型・早朝勤務が苦じゃない
  • 派手な数字より安定を求めるタイプ
  • 清潔感・整理整頓が好き
  • 家族との時間を大事にしたい(地場メインの会社を選べば)
  • 危険物の緊張感がストレスになるタイプ

向かない人

  • 夜型・夜走るのが好き
  • とにかく年収を最大化したい
  • 細かい記録・点検が苦手
  • 時間に縛られるのが嫌い
  • 「言われたルーティン通りに動く」がきつく感じる

乙4は食品系で活きるのか

正直に言うと、食品系ローリーで乙4は「法的に必須」ではないです。醤油・食用油・牛乳・シロップ・液糖はそもそも危険物に該当しないので、法律上は乙4なしでも乗れます。

ただ、25年見てきた中で「乙4持ってる人」は明らかに採用で有利でした。理由は3つ。

  • 会社が「将来ガソリン・化学品系にも展開できる人材」として評価する
  • 高濃度アルコール(スピリッツ原酒・醸造用エタノール等)を運ぶ会社では実質必要
  • 「タンクローリー業界の基本知識がある」という証明になる

食品系を狙うなら、乙4は「必須じゃないけど、持ってると面接で一段強い」くらいに考えておくのが現実的です。

まとめ:食品系ローリーは「安定型」の人の選択肢

業界25年やってきて、食品系ローリーは「派手じゃないけど、長く続けやすい現場」だと感じます。

  • 年収中心レンジは450〜540万円(長距離メインなら600万到達も)
  • 危険物のリスクは低いが、衛生・時間指定のプレッシャーは別ベクトルで強い
  • 早朝・ルーティン型が向いている
  • 乙4は法的に必須じゃないが、あれば採用で有利
  • 「家族との時間を大事にしたい」タイプには合いやすい

次回は、シリーズ第6回として「ガソリンローリー=乙4必須」は思い込みだった話を書きます。10年前、自分が千葉の運送会社2社(ガソリンローリー専属・ドラム缶配送メイン)の面接を受けた実体験から、求人票の「丙種可・乙4優遇」が意味することと、今また動こうとしている現在地までをまとめます。

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