早朝の港と、ヒヤリ体験 — 海コン15年で体に刻まれた教訓

仕事のリアル

前回は、コンテナヤードの「内側」——番地システム、機械との協働、港文化について書きました。

今回は、その現場でドライバーが毎日向き合っている「朝のリアル」と、15年間で体に刻まれた失敗・ヒヤリ体験について、正直に書いてみます。

港の仕事は、教科書には載っていない「現場の空気」で回っています。その一端が伝われば嬉しいです。

夜明け前の港 — ゲート開場を待つ時間

海コンの仕事は、とにかく朝が早いです。

ゲートが開くのは午前7時、8時あたり。でもドライバーたちは、その1〜2時間前から並んで待っています。私の1日も、だいたい朝3時半〜4時起きでした。

ゲート前の道路には、トレーラーがずらっと並びます。仮眠しながら開場を待つ。空が少しずつ白んでいく港の景色は、このときにしか見られないものでした。

早く並んだからといって、必ずしも先に進めるわけではありません。予約番号の順、コンテナの場所、その日の作業状況——いろんな要素が絡んで、ゲートの流れは決まります。焦ってもどうにもならないので、ベテランほど「待ち時間を楽しむ」ようになります。

朝イチで港に入って、朝日を浴びながらコンテナを積み、昼前には配達先へ——これが理想の1日でした。でも現実は、そう上手くいかないことの方が多かったです。

港のルール違反で、こっぴどく怒られた話

海コンの現場には、独特のルールがあります。最初のうちは、そのルールすら知らずに動いていて、何度も怒られました。

一番覚えているのは、若い頃にやったこれ——「指定レーン以外を走った」

コンテナヤードは、ドライバー用の走行レーンと、ガントリークレーンの作業エリア(本船作業)が厳密に分かれています。私はそれを知らずに、近道しようとして作業エリアに入ってしまった。その瞬間、パトロールカーに

おい、そこから出ろ!止まるな、ゆっくり出ろ!

あとで聞いた話では、上で動いていたクレーンのオペレーターが私のトレーラーに気づくのが一瞬でも遅れていたら、コンテナが上から落ちてきていた可能性もあったそうです。冷や汗が止まりませんでした。

他にも、こんなことで叱られました。

  • 一方通行を逆走してしまった : 基本一方通行
  • ヘルメット未着用でトラックから降りた:ヤード内では必須
  • コンテナ番号の確認を省略して連結:違うコンテナを運ぶところだった

一つひとつは小さなことに見えますが、これが積み重なると大事故につながる。港の先輩たちが厳しく言ってくれたおかげで、今の私があります。

ヒヤリ体験 — 事故寸前の瞬間たち

15年も乗っていると、「あのときは本当に危なかった」という場面がいくつもあります。

① 重量オーバーに気づかず走ってしまったこと

あるとき、荷主側の手違いで申告重量より3トンも重いコンテナを積まされていました。走り出してから「ブレーキの効きがおかしい」と感じて、すぐ路肩に寄せて重量証明を確認。本当にゾッとしました。 あのまま高速の下り坂に入っていたらと思うと、今でも背筋が冷えます。

② コーナーで荷崩れを感じた瞬間

左右の重量バランスを甘く見て、高速のカーブで「コトン」という振動を感じた。速度を落として次のパーキングエリアまで祈るように運転した、あの時間の長さ。デバン作業でコンテナの扉を開け荷物が片側にドサっと寄っていました。

③ ヤードの狭いレーンでバック中、ミラーに映らない自転車

これは一番怖かった。港の作業員の方が自転車でヤード内を移動していて、私のトレーラーの後ろに入ってきてしまった。幸い、「止まって!」と叫ぶ声が聞こえてすぐブレーキを踏めた。あと1秒遅れていたら——と思うと、今でも手が震えます。

ヒヤリ体験は、「運が悪かった」で済ませてはいけません。なぜそれが起きたのか、次に同じ状況になったらどう防ぐか——必ず自分の中で整理するようにしています。

海コン車両の日常点検 — 普通のトラックとは違う点

海コンのトレーラーは、普通のトラックとは点検項目が違います。

① 連結部(カプラー・キングピン)

トラクタとシャーシ(コンテナを載せる台車)をつなぐ要の部分。ここのロックがしっかりかかっていないと、走行中にシャーシが外れるという最悪の事態につながります。ガシャンとつないだ音がしたらすぐにヘッドを前進させて(しゃくり)はずれないか確認します。

② ツイストロック

コンテナをシャーシに固定する金具。4隅すべてがロックされているか、走り出す前にぐるっと歩いて確認するのがルーティンでした。「まあ大丈夫だろう」で済ませて、走行中にコンテナがズレたベテランも知っています。ヤードでロックがかからない場合は作業員が協力してくれます。

③ タイヤ

トレーラーはタイヤの数が多い(前2本+後ろ8本+シャーシ8本)。重量物を運ぶ仕事なので、空気圧と摩耗のチェックは特に慎重に。

④ エアブレーキ系統

トレーラーは空気圧でブレーキを作動させます。エア漏れは命取り。朝の点検でエア圧の上がり方、ブレーキの効き具合を必ず確認。「シュー」というエア漏れの音に敏感になる、というのが海コンドライバーの職業病です。

これらは全部、朝の出庫前にやります。面倒くさい日もありましたが、サボった日に限って何かが起きる——これが現場の真実です。

失敗と学びが、技術になる

こうして振り返ると、海コンの15年は「失敗と学びの連続」でした。

怒られた、怖い思いをした、危うく事故になりかけた——その一つひとつが、今の私の体に染み込んでいます。

面白いもので、「体に染み込んだ恐怖」ほど、確実に身を守ってくれる技術になるんです。頭で覚えたルールは忘れますが、心臓が冷えた経験は一生忘れない。

若いドライバーたちにも、私は必ず自分の失敗談を話すようにしています。「先輩みたいに立派じゃない、こんな恥ずかしい失敗もしてきた」——その方が、言葉が届くと感じるからです。

次回は

次回は海コンシリーズの最終回——15年間この仕事を続けてきた中で本当に伝えたいことを書きます。

誇り、葛藤、次の世代への思い、そして今の仕事につながっている学び。シリーズの締めくくりとして、正直な気持ちをお伝えしたいと思います。

最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。

いっちゃん


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