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「トラックドライバーの年収は約490万円です」——こういう記事は、いくらでもあります。私も書きました。
ただ、その数字を見て転職を考えている人が本当に知りたいのは、たぶんそこではないと思うんです。その金額で、実際にどんな暮らしができるのか。どこを削って、どこに使っているのか。
私はトラックドライバー25年、そのうち15年は海上コンテナのトレーラーに乗っていました。今は食品の近距離配送をしています。結婚していて、子どもが二人。家も建てました。この記事は、その私の家計の中身です。
先に断っておきます。これは「ドライバーはこういう生活です」という話ではありません。私はこうしている、というだけの話です。人によって家族構成も住む場所も違うので、正解として書くつもりはありません。お金の勧め方をする記事でもありません。
先に結論——収入が上がっても下がっても、生活は変わらなかった
25年やってきて、はっきりしていることが一つあります。
収入が増えたときも、減ったときも、私の暮らしはほとんど変わりませんでした。変わったのは、貯金と積立の金額だけです。
これから先の話は、全部この一行の中身の説明だと思ってもらっていいです。
削っているもの① 生命保険は、共済をひとつ残して全部やめた
一番大きく削ったのは保険です。
今は掛金の安い共済をひとつ残しているだけで、それ以外の生命保険は全部やめました。
やめてみて困ったことは、今のところありません。毎月の固定費というのは、一度下げると、そのまま下がりっぱなしになるのがいいところです。弁当を作るのは毎日の手間がかかりますが、保険は一回やめれば、あとは何もしなくていい。
ただ、これは私の家の事情でそうしただけです。子どもが二人いる家で保険を薄くしているので、無責任に聞こえる人もいると思います。守るものが違えば答えも変わるので、「やめたほうがいい」と言うつもりは一切ありません。私はこうした、というだけです。
削っているもの② 仕事の日は、必ず弁当
働く日の昼めしは、家から持っていく弁当です。ずっとそうしています。
ただ、理由は「節約のため」だけではありません。そうせざるを得ない事情のほうが大きいんです。ここはドライバー以外の人には伝わりにくいところだと思うので、正直に書きます。
港の弁当は安い。でも量が多くて太る
港には安い弁当屋があります。値段だけ見れば悪くありません。
ただ、とにかく量が多い。ドライバー向けなので当然といえば当然ですが、あれを毎日食べていたら確実に太ります。座りっぱなしの仕事で、あの量を毎日は無理でした。
港の外は、そもそも停められない
これが一番大きいかもしれません。
普通の節約の話は「我慢して外食を減らす」ですが、トレーラーの場合は、我慢する以前に店に行けません。港の外に出れば選択肢はありますが、あの長さの車を停められる場所がない。コンビニの駐車場にも入れません。
選んで我慢しているのではなく、車がデカすぎて最初から選択肢がない。これがドライバーの昼めしのリアルです。
コンビニは、高すぎて問題外
停められたとしても、コンビニで昼めしを買うと、それだけでいい金額になります。毎日となると、月で見たときの差がばかになりません。
ただし、コーヒーだけは買います。150円くらいのやつです。理由は単純で、うまいから。ここだけは削っていません。
そして、運転中に昼めしのことを考えなくていい
実は、これが弁当を続けている一番の理由かもしれません。
弁当があると、「今日どこで何を食べるか」を考えなくて済みます。どこに停められるか、この時間なら空いているか、そんなことを運転しながら考えなくていい。
弁当は、節約の道具というより判断を一つ減らす道具でした。ドライバーの仕事は、一日中こまごまと判断をし続ける仕事です。減らせる判断は、減らしたほうが楽です。
作るのは、そんなに大変ではない
「毎日作るのが大変では」とよく言われますが、実際そこまでではありません。
- 冷凍食品がよくできている。今のものは本当に十分です
- 晩めしの残り物を使う。これで一品埋まります
- 夜のうちに、おかずだけ弁当箱に詰めて冷蔵庫に入れておく
- 朝は、ご飯を詰めるだけ
私は出勤が早いので、朝にあれこれやる余裕はありません。だから前の晩のうちに、おかずは詰め終えておきます。朝やることを「ご飯を入れる」だけにしておく。これがコツです。
そして夏は、もうひとつ必要です。
保冷剤を、弁当箱の上に乗せて持っていきます。
ここはドライバー特有の事情です。朝早くに用意した弁当を、昼まで持たせなければいけない。海コンの頃は5時か6時台の出勤でしたし、今の会社は2時半出勤です。しかも夏のトラックの中は、想像以上に暑くなります。普通の職場のように冷蔵庫に入れておくことはできません。
保冷剤ひとつで済む話ですが、これを知らずに夏を迎えると、痛い目を見ます。
削っているもの③ トラックの芳香剤を、買わなくなった
昔はよく買っていました。トラック用品店に行くと、つい見てしまうんです。
でも、ある時に気づきました。なくても、別に何も変わらない。そして、あれは結構いい値段がします。
今はもう買っていません。困ったことは何もありません。
トラック用品というのは、乗り始めた頃ほど買いたくなるものです。私もそうでした。ただ、長く乗るほど、本当に要るものは減っていきます。
それでも、沖縄には毎年行く
ここまで読むと、ずいぶん締めた生活に見えるかもしれません。でも、使うところでは使います。
年に一度の家族旅行だけは、惜しみません。沖縄によく行きます。いつもは夏です。去年は台湾に行きました。
並べてみると、我ながらはっきりしています。
- トラックの芳香剤は、もう買わない
- でも、家族で沖縄には毎年行く
ケチにしているわけではなくて、順番が決まっているだけです。何を我慢するかを決めているというより、何を絶対に残すかを先に決めているという感じでしょうか。
休みの日は、外に食べに行く
仕事の日は弁当ですが、休みの日は逆です。
寝て過ごすのはもったいないので、昼めしを食べに出かけます。ラーメン屋、町の中華、ショッピングモールのフードコート。だいたいそのあたりです。
働く日に締めているぶん、休みの日は普通に使う。ずっと我慢していたら、たぶん続きません。
収入が増えたとき、変わったのは積立の額だけだった
ここからが本題です。
私の年収は、こういう推移をしてきました。タンクローリーの給料相場の記事にも書いた通りです。
- 20歳・業界に入った頃:約360万円(ボーナスほぼなし)
- 海コンに移ってすぐ:400万円台前半
- 海コン10年目あたり:450〜480万円
- 海コン最高期(15年目前後):500万円台前半
360万から510万台まで、25年かけて150万ほど増えました。
では、その150万で暮らしがどう変わったか。
家を建てました。ただ、変わったのはそれくらいです。いい車に買い替えたわけでも、外食が増えたわけでもない。弁当は弁当のままでした。
あとは、積立NISAに回す金額が増えました。収入が増えたぶんは、ほぼそこへ流れていっただけです。
意識して我慢したというより、生活のほうが増えた収入についてこなかったという感覚に近いです。
収入が落ちたとき、変わったのは貯金の速さだけだった
そして今、私は海コンをやめて、食品の近距離配送をしています。
正直に言います。収入は、結構落ちました。海コンのピークが500万円台前半で、今はそこから100万円近く下です。ボーナスも年1回で、金額は多くありません。
年100万円落ちたら、生活が壊れそうな気がしますよね。私もそう思っていました。
実際どうなったか。
暮らしは、何も変わりませんでした。弁当を作って、コーヒーを買って、休みの日は食べに出て、去年は台湾に行きました。
変わったのは貯金が増えるスピードだけです。減ったのは、生活ではなく、貯まる速さでした。
これは我慢の結果ではないと思っています。収入が増えたときに生活を上げなかったから、落ちたときに落ちるものがなかった。ただそれだけの話です。
家を建てていて、子どもも二人いますが
ここは、はっきり書いておいたほうがいいと思います。
「身軽だったから耐えられたんでしょう」と思われるかもしれません。違います。私は家を建てていますし、子どもも二人います。その状態で、年収が100万円近く落ちました。
それでも生活が変わらなかった理由は、住まいの費用の考え方にあると思っています。
家賃だと思えば、独身でも結婚していても、出ていく金額は変わりません。住む場所にかかる金は、形が違うだけで誰でも払っています。私の場合はそれがローンという形になっているだけで、賃貸の人が毎月払っているものと、性質は同じです。
だから「家を建てたから身動きが取れない」とは思っていません。問題は家があることではなく、収入が増えたときに毎月の固定費を一緒に増やしてしまったかどうかだと思います。
給料に出てこないコスト——2時半出勤と、遠い勤務地
ここは、求人票を見ているだけでは絶対に分からない部分なので、書いておきます。
今の私の勤務は2時半出勤です。そして、勤務地が遠い。
この通勤時間には、1円も出ません。当たり前ですが、給料には含まれていない。年収の比較表にも、求人票にも出てきません。
つまり今の仕事の条件を正確に書くと、こうなります。
- 給料は前より低い
- ボーナスは年1回で、多くはない
- そのうえ勤務地が遠く、通勤時間は無給
逆に言えば、年収が同じでも、家から近い会社のほうが実質は上だということです。片道30分違えば、往復1時間。それが週5で毎週続きます。
求人を比べるとき、金額だけを並べると、この部分が丸ごと抜け落ちます。私は今、それを身をもってやっている最中です。
トレーラーのほうが稼げるのか
収入が落ちたので、正直こう思うことがあります。「やっぱりトレーラーのほうが稼げるのかな」と。牽引免許は特殊な免許ですし。
ただ、落ち着いて考えると、これは半分正しくて半分違います。
トレーラーが有利な点は、確かにあります。牽引免許を持っている人は少ないので、代わりがききにくい。海コンは1本いくらの歩合が乗る会社も多い。トレーラーに乗り換えた日の記事にも書きましたが、乗り換えたときは実際に手取りが上がりました。
でも、収入差の大部分は、たぶん「残業時間」のほうです。
海コン時代の私は、月70時間くらい残業していました。今はほとんどありません。月70時間の差は、それだけで十数万円動きます。年にすれば、まさに100万円前後です。
ここで大事なのは、その70時間が、私にはそんなにきつくなかったということです。海コンの待ち時間の記事に書いた通り、あの仕事は待っている時間が長い。手積み手降ろしもない。だから残業70時間でも、体は今より楽でした。
整理すると、こういうことだと思っています。
トレーラーだから稼げるのではなく、トレーラーは「長く拘束されても耐えられる働き方」だから、結果として稼ぎやすかった。
残業70時間そのものについては、残業70時間はきついのかのほうに詳しく書いています。
収入が下がる転職が怖い人へ
この記事で一番言いたかったのは、ここです。
「今より年収が下がるかもしれない」——それが怖くて動けない人は多いと思います。私も、そうでした。
実際に100万円近く落としてみて分かったのは、減るのは生活ではなく、貯まる速さだったということです。
もちろん、これは私の場合の話です。家のローンも子ども二人もある状態でしたが、それでも成り立ったのは、収入が増えたときに毎月の固定費を増やさなかったからだと思っています。事情が違えば、同じようにはいきません。
それでも、一つだけ言えることがあります。
収入が上がったときに生活を上げるかどうかで、次に動けるかどうかが決まります。上げなかったぶんが、そのまま「選べる自由」になって残る。25年やって、これが一番実感していることです。
なお、収入が下がる話を家族にどう伝えたかは別の記事に書きました。私の場合、妻は一度も反対しませんでした。揉めたのは金額ではなく、まったく別のことでした。
まとめ
- 削っているのは、保険(共済をひとつ残して全部やめた)・仕事の日の昼めし・トラック用品
- 弁当は節約というより、停める場所がないからと運転中に考えなくていいから
- 使っているのは、年1回の旅行と休みの日の外食。150円のコーヒーは削らない
- 収入が150万増えたとき、変わったのは積立の額だけ
- 収入が100万近く落ちたとき、変わったのは貯金の速さだけ。家のローンも子ども二人もある状態で
- 年収の比較には通勤時間という無給のコストが出てこない
- トレーラーが稼げるのではなく、長く拘束されても耐えられるから稼げていた
年収の数字だけを見ていると、この辺りは全部見えません。トラックドライバーの年収リアルと合わせて読んでもらえると、たぶん立体的になると思います。
条件を、自分で聞きにくい人へ
この記事を書いていて改めて思ったのは、年収の数字より、通勤時間・残業時間・ボーナスの回数のほうが、暮らしへの影響が大きいということです。
ただ、これを面接で自分から聞くのは、正直やりにくいです。「通勤はどれくらいですか」「ボーナスは年何回で、実際いくらですか」——聞いた瞬間に、条件ばかり気にする人だと思われそうで、私も現役の頃は聞けませんでした。
そういうときに、間に人を挟むという手があります。ドライバー専門の転職エージェントなら、条件面の確認を代わりにやってくれます。
たとえばドライバーの求人・転職・募集なら【レバジョブ】
は、ドライバー職に特化したサービスです。
私は登録していません。今の会社にいながら求人を眺めているだけなので、実際に使った感想は書けません。ただ、言いにくいことを代わりに聞いてもらえるというのは、こういう業界では意味のある仕組みだと思います。
自分で直接聞ける人は、そのほうが早いです。無理に使うものではありません。


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