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海上コンテナの仕事で、一番長かったのは何かと聞かれたら、私は運転ではなく待ち時間だと答えます。
私はトラックドライバーとして25年、そのうち海上コンテナのトレーラーに15年乗ってきました。走っていた港は東京港です。今回は、その15年でひたすらやっていた「並ぶ」という時間の話を書きます。
先に言っておくと、これは愚痴ではありません。待ち時間というのは、この仕事の給料と生活を決めている、いちばん大きな要素だからです。これから海コンをやろうかと考えている人には、運転技術の話より先に知っておいてほしいことです。
16時半に並んで、コンテナを返したのは深夜3時
一番長かった日の話からします。
その日は最終の受付時間ぎりぎり、16時半に並びました。そしてコンテナを返し終わって、ようやく解放されたのが——日付が変わって、深夜3時です。
10時間半、そこにいたことになります。
もちろん毎日こうではありません。これは記憶に残っている、いちばん極端な日です。ただ、こういう日が「ありえない」わけではない。それがこの仕事です。
平均は2時間。でも、その平均にあまり意味はない
ならして考えれば、平均で2時間くらいだったと思います。
ただ、この「平均2時間」という数字は、あまり信用しないでください。実際には、時間帯によってまったく違うからです。
- 午前中は比較的空いている
- 16時半が最終の並びなので、16時ごろから一気に混み始める
終わりの時間が決まっているので、そこに向かってみんなが集まる。当然です。だから同じ「1本運ぶ」でも、午前に行けるか夕方になるかで、その日の終わり方が変わります。
そして、どちらに行くかを決めるのは自分ではありません。この話は後でします。
待つ場所は、ひとつではない
「ゲートで待つ」と言うと、一箇所で並ぶだけのように聞こえます。実際は違います。
- ふ頭に入るまでの道路での並び
- ヤード内での並び
- アウトチェック(出るときの確認)での並び
- コンテナを受け渡すレーンでの並び
段階ごとに待ちます。ひとつ抜けたと思ったら、また次で止まる。10時間半かかった日というのは、この全部が詰まっていた日です。
それとは別に、荷主のところでのデバン(コンテナから荷物を出す作業)やバン詰め(積み込み)もあります。こちらは1時間くらいで終わることが多いですが、半日かかった日もありました。
なぜ待つのか
待たされる理由は、だいたい決まっています。
一番大きいのは本船荷役です。船が着いて積み降ろしをしているとき、作業は本船が優先されます。船を待たせるわけにはいかないからです。そうなると、トラック側が何時に動けるかは読めなくなります。
他にもあります。
- コンテナの置き場所——取り出しにくい場所にあると、それだけ時間がかかる
- テナーが来ない——テナーというのは現場での呼び方で、正式にはトランスファークレーン(タイヤ式門型クレーン、RTG)といいます。ヤードでコンテナを持ち上げて運ぶ、あの門のような形をした機械です
- 休憩——動かす人にも休憩はあります。当たり前のことですが、待っている側から見れば、ただ止まっている時間です
どれも、こちらにはどうにもできないことばかりです。
待っている間、何をしていたか
今はスマホです。だいたいの人がスマホを見ています。
スマホがなかった時代は、テレビを見たり、音楽を聴いたり、本を読んだり、仮眠を取ったりしていました。振り返ると、あの頃のほうが工夫していたかもしれません。
ひとつ、これは書いておきたいことがあります。
トイレの話
きれいな話ではないので飛ばしてもらってもいいのですが、これは実際にやった人にしか分からないことなので書きます。
トイレは、車両待機場にはあります。問題は、そこを出てしまうと、ヤードに着くまでないということです。
列に並んでいる最中に、いつ動くか分からない。抜けるわけにはいかない。男はトラックの陰でどうにかしてしまう人もいますが、大きいほうはどうにもなりません。
そして——女性ドライバーは、本当に大変だと思います。陰に隠れるという手も使えない。この仕事に女性が増えないのは、給料や体力の問題だけではないはずです。
待機場を出る前に済ませておく。それしかありません。
トイレ以外、トラックからは離れない
待っている間、私はトラックから離れませんでした。周りもそうです。
理由はひとつで、いつ動き出すか分からないからです。自分のところで列が止まったら、後ろが全部詰まります。ちょっと売店に、というのができない。
だから「休憩」ではないんです。座っているだけで、ずっと待機しています。体は休んでいるのに、気は休まらない。この感じは、外から見ているとたぶん分かりません。
待ち時間は、給料になるのか
ここが一番大事なところだと思うので、正直に書きます。
待ち時間は、拘束時間には入っていました。働いていない扱いにされていたわけではありません。
ただ、私がいた会社は日給制でした。そして1日あたり5時間分のみなし残業が、その日給に含まれていました。
つまり、こういうことになります。
10時間半待った日も、2時間で終わった日も、もらえる金額は同じ。
残業がなくても1日分はもらえるので、逆に早く終わった日は得をした気分になります。土曜日は半日で終わったので、あれは正直ありがたかった。ただ、その裏返しとして、どれだけ待たされても金額は動かない。待ち時間は、うまくみなし残業の枠の中に収まるようになっていました。
海コン時代、私の残業は月70時間くらいありました。ただ、1日5時間のみなしが月25日以上あれば、70時間は最初から枠の中に入ってしまう計算になります。「残業しているのに残業代が増えない」と感じる仕組みは、こういうことだったのだと、今になって分かります。
念のため書いておくと、これは違法だったという話ではありません。当時はそういう契約でした。ただ、2024年4月からは時間外労働の上限が年960時間(月平均80時間)になっています。1日5時間を月25日で積むような枠の設定は、今はもうできません。残業70時間はきついのかという記事でも書きましたが、求人票に並んでいる数字は「枠」であって、実際に働く時間とは別のものです。
額面の外側に、年90万近くあった
お金の話をもう少し続けます。
日給の額そのものはここには書きませんが、日給だけを見ると、正直そんなに高くありません。求人票にその数字だけ載っていたら、私でも見送ると思います。
ただ、実際にもらっていたものは日給だけではありませんでした。
- 皆勤手当 月1万円
- 無事故手当 月2万円
- 1年間無事故だと 年8万円
- ボーナス 年45万円
足すと、年間で90万円近くになります。日給を12ヶ月分積み上げた金額の、外側にこれだけ乗っている。
私は海コン時代、最終的に年収500万円台の前半まで届きました。その中身がこれです。日給の数字だけを見て判断していたら、たどり着いていない金額でした。
ついでに言うと、最近の求人を見ていると、日給制はあまり見かけなくなりました。業界全体がそうなのかまでは調べきれていないので、あくまで私が見ている範囲の話です。ただ、日給いくらという書き方が減っているのは確かだと思います。
自分にできたのは、早く並ぶことだけ
待ち時間を減らす方法はあったのか。正直に言うと、ほとんどありませんでした。
まず、どこに行くかを決めるのは配車マンです。自分では選べません。だから私にできたのは、「どこに振られてもすぐ動けるようにしておく」ことだけでした。
やっていたのは2つです。
- 東京港ポータルサイトのライブカメラを見る——ふ頭周辺の混み具合がリアルタイムで映っています
- 仲間からの情報——「あそこは今ひどい」「こっちは流れてる」というやりとり
これで先に状況をつかんで、少しでも早く列につく。それだけです。
後で知ったのですが、このライブカメラは東京都と東京港埠頭が公式に出しているもので、混んでいる道路や時間帯を避けて走ってもらうために設置されているそうです。さらに今は、トラックに積んだGPSから待機時間を実測して公表する「見える化」の仕組みもあります。
行政が、待ち時間を解決すべき問題として扱っている。現場にいた頃は、ただ自分たちが我慢するものだと思っていました。
一番きつかったのは、終わりが見えないこと
最後に、これだけは書いておきたいことがあります。
よく「何時間も待つのは大変でしょう」と言われます。でも、待つこと自体は、実はそこまでではありません。「今日は3時間だな」と分かっていれば、人はけっこう耐えられるものです。
きついのは、何時に終わるのか分からないことでした。
勢いよく進むときもあれば、ピタッと止まって1時間動かないこともある。あと少しだと思った次の瞬間に、まったく動かなくなる。予定が立てられない。家に何時に帰れるかも言えない。
だから、ある時期から私はこう考えるようになりました。並んだ時点で「ここから何時間だな」と諦める。期待するから、動かないときにしんどくなる。最初から諦めておけば、気持ちは楽でした。
それでも、ふと思うことはありました。
他の人はもう帰っているのに、自分はまだここに並んでいる。
あの時間は、何だったのだろうと思います。給料は変わらない。誰も見ていない。ただ、コンテナを運ぶという仕事は、その時間があって初めて成り立っていました。
これから海コンをやる人へ
脅すつもりはないので、まとめておきます。
- 待ち時間は必ずある。平均2時間、長い日は10時間ということもある
- 待つ場所は複数ある。道路、ヤード内、アウトチェック、受け渡しレーン
- 原因のほとんどは本船荷役。自分ではどうにもできない
- 給料の形を必ず確認する。日給制か月給制か、みなし残業が1日何時間分か。待っても金額が変わらないのかどうか
- 手当とボーナスまで含めて聞く。基本の数字だけでは判断できない
- トイレは待機場を出る前に。これは本当に
そのうえで言うと、私はこの仕事を15年やりました。嫌でやめたわけではありません。手積み手降ろしがなく、毎日家に帰れて、夜は家族と過ごせた。待ち時間の長さを差し引いても、私にはやりやすい仕事でした。
海コン15年でわかったことのほうにも、その辺りのことは書いています。
待ち時間は、この仕事の一部です。なくならないものだと思って向き合うか、知らずに入って驚くかで、続くかどうかが変わると思います。
待ち時間のことを、自分から聞きにくい人へ
この記事で一番言いたかったのは、待ち時間がどれくらいあって、それが給料にどう反映されるのかを、入る前に確認してほしいということです。
ただ、これを面接で自分から聞くのは、正直やりにくいと思います。「待ち時間って何時間ですか」「みなし残業は1日何時間分ですか」——聞いた瞬間に、楽をしたい人だと思われそうで、私も現役の頃は聞けませんでした。
そういうときに、間に人を挟むという手があります。ドライバー専門の転職エージェントなら、条件面の確認を代わりにやってくれます。
たとえばドライバーの求人・転職・募集なら【レバジョブ】
は、ドライバー職に特化したサービスです。
私は登録していません。今の会社にいながら求人を眺めているだけなので、実際に使った感想は書けません。ただ、言いにくいことを代わりに聞いてもらえるというのは、こういう業界では意味のある仕組みだと思います。
自分で直接聞ける人は、そのほうが早いです。無理に使うものではありません。

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