トレーラーの右左折はなぜ怖いのか|現役25年が教える内輪差と巻き込みの話

濃紺の背景に「トレーラーの右左折はなぜ怖いのか」の白文字。右側に、夜の濡れた路面の交差点をくの字に折れながら左折するコンテナトレーラーの写真 仕事のリアル

※本記事にはプロモーション(広告)が含まれます。

前回の記事では、トレーラーの連結とバックの話を書きました。今回はその続きで、実際に道路を走って「曲がる」話です。

私はトラックドライバーとして25年、そのうち海上コンテナのトレーラーに15年乗ってきました。この記事は、その15年で体に染み込んだ「曲がるときの感覚」を、できるだけ言葉にしたものです。

トレーラーの運転で、バックの次に難しいのが右左折だと思います。そして、バックが「ぶつけるかどうか」の話なのに対して、右左折は人の命に関わる話になります。自転車、バイク、歩行者。25年乗ってきて、私がいまだに一番神経を使っているのがここです。

教習所では「内輪差に気をつけましょう」と習います。でも現場で本当に気をつけているのは、もう少し違うところなんです。今日はそれを、正直に書いていきます。

あんなに長いのに、なぜトレーラーは曲がれるのか

まず、意外に思われるかもしれませんが、トレーラーは単車(普通の大型トラック)より曲がりやすいんです。あんなに長いのに、と思うでしょう。私も最初は不思議でしたが、これには理由があります。

普通のトラックは、前輪から後輪まで一本の車体でつながっています。この前輪と後輪の距離が長いほど、大きく回らないと曲がれません。だから長い単車ほど、交差点で苦労するわけです。

ところがトレーラーは、カプラーのところで「くの字」に折れます。つまり「長い車体が一本」ではなく、「短い車体が二本、関節でつながっている」状態なんです。ヘッド単体で見れば、前輪から後輪までは意外と短い。だからヘッドが先に小さく曲がって、シャーシが後から折れて付いてくる。見た目の長さのわりに小回りが利くのは、この関節のおかげです。

ただし、いいことばかりではありません。その代わりに内輪差が大きくなります。曲がりやすさと内輪差の大きさは、実は同じ構造から出てくる、表と裏なんです。

だから曲がるときは、ミラーと目視でしっかり確認して、ゆっくり曲がる。これに尽きます。

ちなみに、内輪差はシャーシによっても変わります。2軸か3軸かで挙動が違って、同じ角度をつけても、3軸のほうがグイグイ内に入っていく感じがあります。ただ、これがはっきり分かるのはバックのときで、右左折で同じように体感できるかというと、正直そこまでではありません。「車によって癖が違う」くらいに思っておいてもらえればいいと思います。

振り出しの量は「曲がる先の道幅」で決まる

左折するとき、トレーラーは一度右に頭を振ってから曲がります。いわゆる振り出しです。

では、どのくらい振るのか。答えは「曲がる先の道幅による」です。広い道なら振らなくても入れますし、狭ければ対向車線にまで頭を出して振らないと入れません。

やっかいなのが、曲がる先の道で、停止線を越えて止まっている車がいるときです。ああいう車が一台いるだけで、通れるスペースが一気に狭くなる。そうなると、こちらはさらに大きく振らないと入れません。運転している方は「ちょっとくらい」のつもりでしょうけど、こっちは本気で困っています。

そして、ここに一番の危険があります。

大きく頭を振ると、空いたスペースに入ってくる

大きく頭を振ると、車体とガードレールの間にスペースが空きます。そこに、バイクや乗用車が直進してくるんです。

こちらからすれば、そこは「これから車体が通る場所」です。でも外から見ると、ただ空いているスペースにしか見えない。だから入ってくる。これが、いわゆる巻き込みの正体です。内輪差そのものより、この「空いて見えるスペース」のほうが、私は怖いと思っています。

だから、大きく振るときほどゆっくり、慎重に。急いで曲がっていいことは一つもありません。

左折が右折より怖い、本当の理由

右折と左折、どちらが怖いかと聞かれたら、迷わず左折です。でもそれは、内輪差が大きいからではありません。

右折は、右ハンドルだから顔を出せるんです。窓から顔を出して、手を上げて「先に行かせてください」とアピールできる。相手も気づいてくれる。目とジェスチャーで、ちゃんと会話ができるわけです。

ところが左折は、ミラーしかありません。顔を出せない。手も上げられない。相手がこちらに気づいているかどうかも分からない。この「コミュニケーションが取れない」ということが、左折の本当の怖さです。

だから左折は、右折よりずっと慎重になります。

バイクは「いなかった」のに、来る

実際にあった話をします。

信号のある交差点で、左に曲がろうとしていました。手順どおり、頭を振る前に左ミラーを確認します。バイクはいませんでした。右側は対向車がいたので、顔を出して手を上げ、譲ってもらいました。

さあ左折しよう、というところで、もう一度左ミラーを見ました。バイクが来ていました。乗用車の間をすり抜けて、後ろから真っ直ぐ。さっき見たときには、いなかったはずのバイクです。

止まりました。それだけです。特に焦りもしませんでした。

この話で伝えたいのは、二つあります。

一つ目は、一回の確認では足りないということ。バイクは車の間をすり抜けて来ます。だから、最初に見たときにいなくても、次の瞬間にはいる。「さっき見たから大丈夫」——これが一番危ない考え方です。私は必ず、振る前と、曲がる直前の二回見ます。

二つ目は、安全の余裕をつくっているのは、確認の精度ではなく速度だということです。あのとき止まれたのは、目がよかったからじゃありません。大きく曲がるときはスピードが出ていないから、すぐ止まれた。ただそれだけです。逆に言えば、速度が出ていたら、同じように確認していても間に合いませんでした。

そして、焦らなかった理由もはっきりしています。「バイクが来るかもしれない」と、前もって予想していたからです。予想していれば、来ても「やっぱり来たか」で済む。予想していない人が驚いて、焦って、事故になる。25年やってきて、私はそう思っています。

横断歩道は「先に行かせる」気持ちで

右左折で、私が特に注意しているのが横断歩道です。

トレーラーは長い。ということは、横断歩道を通過し終わるまでに時間がかかるということです。

ここで何が起きるか。無理に先に曲がろうとすると、渡ろうとしていた歩行者や自転車が、横断歩道の上で止まってしまうんです。長い車体が通り過ぎるのを、横断歩道の真ん中で待たされることになる。これが一番危ない状態です。

だから私は、横断歩道では歩行者と自転車をしっかり確認して、先に行かせる気持ちで待ちます。こちらが待てば、相手は渡りきれる。無理に行こうとするから、巻き込む危険が出てくるんです。

そして、曲がり始めてからも気を抜きません。トレーラーの後ろが横断歩道を通過し終わるまで、しっかり見ています。頭が通ったら終わり、ではないんです。

渋滞の交差点で、空けたスペースに入られる

横断歩道に関連して、もう一つ書いておきたいことがあります。

信号の先が渋滞していることがあります。こういうとき、40フィートのトレーラーは、車三台分くらいの空きがないと交差点に入れません。無理に入れば、横断歩道の上で止まってしまうからです。だから、手前で待ちます。

すると、その空けたスペースに、隣の車線から入ってこられます。

正直、諦めるしかありません。怒っても仕方がないので、また次を待ちます。事故渋滞のときなどは、たいていこのパターンになります。

分かってくれるのは、たいていトラックドライバーです。大きい車を運転したことがある人は、あの空きが「譲っている」のではなく「入れないから待っている」のだと分かる。逆に言えば、乗ったことがなければ分からなくて当たり前だと思います。だから責める気はありません。ただ、知っておいてもらえたら嬉しいです。

ちなみに、ずっと待っているのかというと、そうでもありません。トラックは運転席が高いので、前の車の何台も先が動き出したのが見えます。乗用車からは見えない情報が、こちらには見えている。その動きを見て、歩行者や自転車がいないことを確認して、出ます。

理想を言えば、完全に空くまで待つべきなのだと思います。でも待ち続けると、いつまでも進めません。だから、少し出てしまうことは正直あります。ただし、人がいたら絶対に行きません。そこだけは譲りません。

狭い道はきつい。でも、狭い所に入れるのがトレーラー

曲がりにくい交差点はどんなところか、切り返しが必要になるのはどんなときか。いろいろ考えましたが、共通しているのは結局ひとつでした。

道幅が狭いこと。これに尽きます。狭ければ振り出しも大きくなるし、一発で曲がれずに切り返すことにもなる。そして何より、ぶつけるリスクが上がります。

ただ、誤解しないでいただきたいのは、トレーラーは「長さの割に、意外と入れる」ということです。むしろ、狭い所に入っていけるからこそ、トレーラーには需要があるんだと思います。

さっき書いた関節の話が、ここで効いてきます。同じだけ荷物を積める長い一本モノの車では入れないような現場でも、くの字に折れるトレーラーなら入っていける。あれだけ長い車体で狭い構内に収まっていくのを見ると、我ながら不思議な乗り物だなと思います。

もう一つ、コンテナには20フィートと40フィートがあります。運転する側からすると、20フィートのほうが全然ラクです。短いぶん曲がりやすいし、バックもしやすい。そして実際に、20フィートしか入れない現場というのは結構あります。

だから「狭いから無理」ではなく、「この現場はこのサイズなら入る」という判断になる。狭さと付き合うのも、トレーラーの仕事のうちなんです。

とはいえ、無理は禁物です。狭い道に入る前に、本当に入れるのかを一度考える。厳しそうなら遠回りしてでも別のルートを選ぶ。これも技術のうちだと思っています。

新人に伝えたいこと

右左折について、私が新人に言うのはこのあたりです。

  • ミラーは一回で終わらせない。振る前と、曲がる直前の二回見る。
  • 大きく曲がるときこそ、速度を落とす。止まれる速度で入れば、何かあっても止まれる。
  • 左折は顔を出せない。だから右折より慎重に。
  • 横断歩道では、歩行者と自転車を先に行かせる。無理に行くと、横断歩道の上で止まらせてしまう。
  • 「バイクが来るかもしれない」と、先に予想しておく。予想していれば焦らない。
  • 道が狭いと感じたら、無理に曲がらない。ルートを変えるのも技術。

乗用車やバイクに乗る方へ

最後に、トレーラーの隣を走る立場の方にも、一つだけお願いがあります。

正直に言うと、トレーラーが邪魔な存在だということは、こちらも分かっています。動きは遅いし、車体は長いし、前にいたらイライラすると思います。「トレーラーには譲りたくない」——その気持ちも、分かります。

その上で、一つだけ知っておいてほしいことがあります。

トレーラーが右に頭を振ったとき、その左側に空いたスペースは、「空いている」のではありません。これから車体が通る場所です。

こちらは必死にミラーを見ています。でも、ミラーには限界があります。どうしても見えない瞬間がある。だからそこには入らないでいただけると、本当に助かります。

横断歩道も同じです。こちらが待っているときは、遠慮なく先に渡ってください。待つのはこちらの仕事です。

それと、渋滞の交差点で私たちが空けているスペース。あれは譲っているのではなく、そこに入らないと車体が収まらないから待っているだけです。入られると、また一回分待つことになります。

トレーラー側がどんな気持ちで曲がっているのか、それが少しでも伝われば、防げる事故はたくさんあると思っています。この記事が、その役に立てば嬉しいです。

トレーラーの仕事を探している人へ

内輪差も巻き込みも、慣れれば怖くなくなります。ただそれは、安全に慣れるまでの時間をくれる会社にいられた場合の話です。

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