海コン15年でわかったこと — この仕事の誇りと、次の世代へ【現役ドライバーが語る本音】

仕事のリアル

海コンシリーズも、今回が最終回です。

第5回から始まったトレーラー・海コンの話——免許取得、初めての運転、コンテナヤードの世界、ヒヤリ体験——と書いてきました。最後は、15年間この仕事を続けてきた私が「本当に伝えたいこと」を書きます。

海コンを15年続けた理由

正直に言うと、海コンの仕事は「楽な仕事」ではありません。ゲートの渋滞、重量管理のプレッシャー、早朝の眠気、天候に左右されるスケジュール——大変なことは山ほどあります。

それでも15年続けられた理由を考えると、一つのことに行き着きます。

「この仕事は、誰かの生活を動かしている」という実感。

私が運んでいたコンテナの中には、食品、家電、自動車部品、医療機器——あらゆるものが入っていました。世界中から届いたそれらが、私のトレーラーで港から工場へ、工場から倉庫へ、倉庫から店頭へと流れていく。

「俺がサボったら、日本のどこかで何かが止まる」——大げさに聞こえるかもしれませんが、本気でそう思っていました。その責任感が、私をこの仕事に留めてくれたのだと思います。

この仕事で得たもの

技術:トレーラーの運転技術、コンテナの重量管理、港の手続き。これは他の仕事では絶対に身につかないスキルです。今でもトレーラーのハンドルを握れば、体が覚えている感覚があります。

判断力:港の現場では、毎日「予想外のこと」が起きます。コンテナが違う、重量オーバー、ゲートが閉鎖、配達先の工場が受け入れ拒否——その都度、自分で考えて動かなければなりません。この積み重ねが、私の判断力を鍛えてくれました。

仲間:15年間で出会ったドライバー、ヤードのオペレーター、荷主の担当者——今でも連絡を取り合う人たちがいます。現場でともに働いた人間関係は、他では作れない深さがあります。

景色:夜明けの東京港、横浜港、首都高湾岸線、雨の中のコンテナヤード——言葉では伝えきれない景色を、私は体の中に持っています。

海コンドライバーを目指す方へ

この仕事に興味を持っている方に、正直に伝えます。

難しいことは確かです。

あれほど難しかったバックも、複雑だったヤードの番地も、今では無意識にできるようになりました。人間の体は、繰り返しに応えてくれる。

仕事はターミナルに着く前から始まっている

「ターミナルに行って荷物を取ってくるだけでしょ?」と思われがちですが、実は出発前の準備が仕事の肝です。

STEP 1:シャーシの確認
シャーシとはコンテナを乗せる台車のことです。連結部分の状態確認も欠かせません。

STEP 2:書類の確認
B/L番号・コンテナ番号・シール番号など、ターミナルで必要な書類を事前に確認します。書類が合わないとコンテナを出してもらえません。

STEP 3:ルートと重量チェック
コンテナの中身によって重さが変わります。道路の重量制限・橋の制限・通れない道のチェックは必須です。

誰も教えてくれない現実——トイレ問題

ここは正直に書きます。15年やってきて、一番地味にきつかったのが「トイレ問題」です。

港湾エリアへのルートは、一般道メインで工場地帯や埋立地を走ることが多い。そういう道には、コンビニも公衆トイレもほとんどありません。大型トレーラーは気軽に路肩に止められないし、狭い駐車場には入れない。

朝一番でターミナルに向かうとき、ルートによっては1時間以上トイレなしで走ることがあります。だから私は、出発前に必ずトイレを済ませる。朝の水分も控えめにする。これは15年で身についた習慣です。

こういうことは求人票には書いていません。でも、実際に働くうえで知っておくべき「現実」です。

最低限おさえておきたい専門用語

コンテナの仕事に入ると、最初は聞き慣れない言葉が飛び交います。これだけは覚えておいてください。

シャーシ:コンテナを乗せる台車。切り離して単体でも置いておける。
バンニング:コンテナに荷物を詰める作業(輸出時)。
デバンニング:コンテナから荷物を取り出す作業(輸入時)。
ゲートイン:コンテナターミナルのゲートを通過して中に入ること。
E.I.R:船荷証券。コンテナの荷物の内容・所有権を証明する重要書類。
フリータイム:ターミナルから引き取った後、返却までの無料期間。超えると保管料が発生。

給与面でも、海コンドライバーは一般のトラックドライバーより高い水準です。技術が必要な仕事は、それだけの対価があります。

「難しそう」「自分にできるか不安」と感じている方——その不安は正しいです。難しい仕事だから不安になるのは当然。でも、その不安を超えた先に、誇りを持てる仕事が待っています。

食品配送に戻ってわかったこと

今の私は食品配送の仕事をしています。

海コンをやめて食品に戻ったとき、「なんて小さい世界に帰ってきたんだろう」と感じた時期がありました。コンテナではなく段ボール、港ではなく市場——スケールが全然違う。

でも今は、この仕事にも深い誇りを感じています。毎日届ける食品は、誰かの食卓に並ぶ。「今日も新鮮なものを届けられた」という達成感は、海コンとは違う、でも同じくらい大切なものです。

25年間、ハンドルを握り続けて気づいたことがあります。どんな仕事でも、「誰かの役に立っている」という実感を持てれば、それが誇りになる。仕事の大きさじゃない、仕事との向き合い方が大事なんだと。

このブログを続けていく理由

私がこのブログを書いているのは、ドライバーの仕事の「リアル」を残したかったからです。

教科書には書いていないこと、先輩から受け継いだこと、自分が失敗して学んだこと——それを正直に書けば、誰かの役に立てるかもしれない。

これからも、25年分の経験を少しずつ書いていきます。

最後まで読んでいただいて、本当にありがとうございました。

いっちゃん


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