前回の記事で、積み込みの時間が「実は一番技術がいる」とお話ししました。
今回はそこを掘り下げて、私が25年かけて体に染み込ませてきた積み方の考え方をお伝えしたいと思います。
マニュアルには書いていない、現場の感覚の話です。
まず「卸し順」を頭に入れる
積み込みを始める前に、まず私がやることは、納品先の順番を確認することです。
最初に卸す荷物は、一番取り出しやすい場所──つまりトラックの後ろ側に積む。一番最後に届ける荷物は、奥の方に積む。これが基本です。
当たり前のようですが、荷物の数が多くなると意外と混乱します。私は若い頃、積み始めてから「しまった、順番が逆だ」と全部降ろしてやり直したことが何度もありました。
今は積み込み前に30秒だけ立ち止まって、頭の中でシミュレーションしてから手を動かします。この30秒が、後の1時間を救うことがあります。
「重いものは下、軽いものは上」は当たり前──その先がある
「重いものは下に積む」は誰でも知っています。でも実際の現場はそう単純じゃない。
形が不揃いな荷物、壊れ物、冷凍品と常温品の混載、サイズが大きすぎて縦にしか積めないもの──いろんな制約がある中で、重量バランスを崩さずに積むのが腕の見せどころです。
私が気にするのは「左右の重量バランス」です。片側に重いものが偏ると、コーナーで荷崩れしやすくなるし、タイヤの摩耗にも影響します。特に長距離の場合は、この偏りが走行中にじわじわと響いてきます。
荷物を積みながら「これは右、次は左」と意識的に振り分けていく。地味な作業ですが、これをやっているドライバーとやっていないドライバーでは、現場での事故率が違うと思っています。
ラッシングはケチらない
ラッシング(固定ベルト)の話をします。
面倒くさがってベルトを少なくしたり、ゆるく締めたりするドライバーもいますが、私はこれだけは妥協しません。
緊急ブレーキをかけたとき、急カーブした時、荷物がどう動くかをイメージしてください。しっかり固定されていなければ、荷物は前後左右に崩れます。配達先について扉を開けてびっくりです!
ベルトの締め具合は「引っ張っても動かない、でも荷物を傷めない」くらいが正解。これは感覚で覚えるしかなくて、私も若い頃、先輩の手の動きをじっと観察して真似しました。
「ラッシングをケチる時間はない」──これが私の信条です。
養生は「雨の日だけ」じゃない
荷物を濡らさないためのシートやブランケットを「養生」と言いますが、これを雨の日だけやっている人は要注意です。
夏場の直射日光、冬場の結露、走行中の振動で傷がつくこと──これらから荷物を守るのも養生の仕事です。
今は箱車や冷凍車が結構当たり前ですが、
昔は魚や野菜など平ボディのトラックで運んでいたので、段ボールが少し水気を帯びるだけで荷主さんに指摘が入ることがあります。「そんな細かいことで」と思うかもしれませんが、荷主さんにとって荷物はお金であり、信用です。そこを守ることが、ドライバーとしての信頼につながります。
丁寧に養生してある荷物を見て、「いっちゃん、いつも気を使ってくれてありがとう」と言ってくれた荷主さんがいました。あの一言は今でも覚えています。
積み込みは「運ぶ前の仕事」じゃなく「届けるための仕事」
最後に、一番伝えたいことを書きます。
積み込みを「荷物を載せるだけの作業」と思っているうちは、まだ半人前だと私は感じます。
積み込みとは「この荷物を、傷なく、時間通りに、笑顔で届けるための準備」です。
丁寧に積んだ荷物は、走っている間も安定しています。運転中の余計な不安が減り、集中できる。結果として安全な運転につながる。
積み込みと安全運転は、バラバラではなくつながっています。
若いドライバーに「なんで積み込みをそんなに丁寧にやるんですか?」と聞かれることがあります。私はいつも、こう答えます。
「届けた後のお客さんの顔を想像しながら積んでるから」
「荷姿を見たお客さんだって気分がいいでしょ」
そう思えるようになったのは、ずいぶん時間がかかりましたが。
次回は
次回は、15年乗り続けた「海上コンテナ(海コン)」の話をしようと思います。
港の景色、コンテナヤードの広さ、夜中の長距離──食品配送とは全然違う世界の話です。楽しみにしていてください。
最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。
いっちゃん

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